見出し画像

【PROJECT STORY】~日本橋兜町・茅場町 FinGATE プロジェクトチーム6年間の軌跡 ~

「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」の一環として、金融系スタートアップの起業・成長支援プラットフォーム「FinGATE」は2017年に第1拠点「FinGATE KAYABA」が開業しました。現在は5つの拠点に80社以上の資産運用会社やFintechなどの金融系スタートアップが集まり、エコシステムが構築されています。

そして開業から6年目に差し掛かる2023年10月「FinGATE」は新たなフェーズを迎えます。プロジェクトを推進しているチームメンバーに今までの振り返りやこれからのことを伺いました。

賑わいも実績も理解も・・プロジェクトは”ゼロ”からのスタート!

かつて資本主義の父 渋沢栄一が自宅・事務所を構え、日本初の銀行や取引所を興し、500社以上の起業に関わり、「コト始めの街」として知られる日本橋兜町。1980年代には”NYのウォール街”、”ロンドンのシティ”と並ぶ金融街として東京証券取引所を中心に栄えましたが、株式取引の電子化・株券売買立会場の閉場によって証券会社の移転が進み、人の流れが減り街の姿は大きく変わりました。しかし、この数年でその街並みはガラリと変わり、若者をはじめ多様な人々が街を訪れるようになっています。再開発で街づくりを率いる平和不動産。その再開発プロジェクトの一環である「FinGATE」は2017年に立ち上がり、現在、多くのスタートアップが集まる“場”となっています。

ゼロからスタートしてまもなく6年。今も成長し続ける「FinGATE」事業ですが、最初から順風満帆というわけではありませんでした。当初は社内での風当たりも強かったとプロジェクトの立ち上げから携わっているビルディング事業部主任の荒さんは振り返ります。

「最初はとにかく手探り。まずはイベント等を通じ街に来てもらうことから始まり、施設整備、テナント誘致、地域との交流や国内外プロモーションなど少ない人数でできることをなんでもやっていました。ですが2~3年目までは目に見えた成果はすくなかったため、社内での認識・理解もなかなか高まらず、自身やプロジェクトに対し厳しい意見を頂くこともありました。

ビルディング事業部主任 荒大樹氏(入社10年目)。プロジェクト当初よりチームをリード。

そのような状況下で、今後の進め方について考えていた時、当時の上司に言われたのは、『新しいことを始める時は大体そんなもの。周囲に理解されなくても、正しいと思うこと・やるべきことをやろう!』という言葉でした。その言葉を聞いた時に安心したことを良く覚えています。多数の理解は得られなくても同じ可能性を信じてくれている人がいて、その可能性を追及していくことでのみ納得してもらえるのだと。
また、それはFinGATEでビジネスをしているスタートアップの起業家の皆様も同様であり、少しでもそうした方々の力になれるような場づくりを目指していきたいと強く思うようになりました。」

テナント誘致の苦労、プロジェクトの危機もチームメンバーで助け合って乗り越えた

6年の間には危機的な状況もありました。「証券・金融の街」として栄えたものの、90年代の株式取引の電子化とともに賑わいを失った兜町。そのイメージが根強く、テナント誘致にはとても苦労しました。特に、”新興の資産運用会社”をターゲットとした「FinGATE KABUTO」は最初に入居頂いた1社以降、1年近くリーシングが進捗せず大きな課題となっておりました。そんな危機を救ったのは、あるメンバーのサポートでした。

荒さんと同期入社の村井さんは、5年前に「FinGATE」プロジェクトへ参加しました。(現在は国際金融都市・東京構想を推進する「一般社団法人東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)」の事務局を担当)村井さんは、上記資産運用会社のリーシングに奔走することになります。「資産運用分野のテナントリーシングでは、Fintech分野とは特性やニーズが全く異なりました。”同業が集まるオフィスにはむしろ行きたくない”というフィードバックを頂くことも多く、最初はなかなか興味を持ってもらうことができませんでした。」

現在はFinCity.Tokyo事務局にて活躍する村井翔太郎氏(入社10年目)

同期でもある荒さんと毎日意見をぶつけながら試行錯誤するうちに「いっそのこと、FinGATEのアピールポイントをハードとしてのオフィス空間ではなく、資産運用業立上げを支援する機能としてみよう」と考えた村井さんは、とにかく自分の足で多くのイベントやネットワーキングに参加し、”資産運用業立上げにあたって純粋に悩んでいること”を起業家や有識者に直接ヒアリングしていきました。すると、「資産運用ビジネスを始める際に必要となる行政からの許認可をどのように取得していくべきか、誰に頼るべきかが分からない」といった悩みを抱えている起業家が多いことが徐々に分かってきました。「許認可取得に詳しい専門家の方々をいつでもご紹介出来る環境を整えていきながら、起業家に対しては、オフィス紹介をメインとせずにコミュニケーションをとることを心掛けていきました。」

その結果「FinGATE」シリーズには、新興の資産運用会社を中心に金融系スタートアップの入居が相次ぎ、国内でも非常に珍しい資産運用のスタートアップによるコミュニティができてきました。村井さんがテナントのリアルなニーズを汲み取る姿勢から、将来的な道筋が見えてきたと荒さんは振り返ります。その後、金融庁・財務局による日本拠点開設を目指す海外金融事業者向け「拠点開設サポートオフィス」を兜町に誘致すべく、2人で相談しながら夜中まで資料を作成し、提案を行い入居を実現しました。

プロジェクト初期はチームで夜中まで議論、資料作りすることも

右肩上がりで集積した金融系スタートアップ、街のイメージもみるみる一変。コロナ禍でも退去なし

兜町では「FinGATE」のみならず、ライフスタイル系複合施設など街全体で様々な再活性化プロジェクトが同時並行しています。地域の再開発が進むとともに街に集まってくる人たちの心を動かしたのは、プロジェクトメンバーの熱意でした。街を盛り上げたいという想いに共感してくれたテナント企業が徐々に増え、街のイメージも変わりはじめていきました。

「ある起業家に兜町エリアの街づくりについて説明をしていた時に言われた言葉は今でも覚えています。」
荒さんは話します。

「『兜町?全然イケてないよね?そんなところでやるの』と。実際、当時はオフィスや店舗等ほとんど開発できておらず、目に見える変化がない、寂しい街だったこともあり何も言えませんでした。ですが、当社の街づくりに関する考え方やビジョン等について根気強くお伝えしていくうちに、その起業家は最終的に私たちを信じてくれて入居してくれ、最近お会いした時に「これから一緒に、もっと良くなる流れをつくっていきたいですね」と嬉しい言葉をくれたんです。他のスタートアップ経営者や投資家等、様々なテナント様と日々話をしますが、今の兜町の勢いやプロジェクトは面白い!と言っていただけるのが、一番嬉しいです。」

しっかりと築き上げたテナントとの信頼関係は、新型コロナウイルス感染拡大でリモート中心になり世の中ではオフィス離れが顕著だった期間に、「FinGATE」では退去がなく、むしろ入居数が増加したことにも現れました。

2年前からのプロジェクト参加し、今は育休中の中嶋(萌)さんは、
「コロナ禍でも全く入居状況に影響がなかったのは、テナント企業様が兜町に愛着を感じていただいているからではないかなと思っています。「FinGATEだから入居したい」「組織が大きくなっても、移転ではなくFinGATE内で拡張させたい」との声も増えていて、本当に嬉しいです」

ビルディング事業部 中嶋萌絵さん(入社6年目)。
FinGATE BLOOMプロジェクト担当。現在は育休中

今年からプロジェクトに参加した中島(優)さんは、9月にオープンしたFinGATE BASE 拡張施設を担当しました。

「このプロジェクトに着任する前は、ビルの管理やBCPの仕組みづくり、SDGs環境整備推進をしていました。どちらかというと言われた仕事を正確にこなすことが評価されていたのですが、FinGATEプロジェクトは自分で考え決めていく仕事が多く、大変ですが自分の意思が反映される仕事は心から楽しいです。どのような施設にしたらテナント様の満足度が上がるのかをいつも考えているので、「素早く適切な対応が助かる!」という言葉をもらったりすると、とても嬉しいです。」と話します。

ビルディング事業部 中島優人氏(入社5年目)。FinGATE BASE拡張施設などを担当。

兜町の不動産会社ならではの、唯一無二のエコシステムを創造したい

「これまでの6年、本当に色々なことがありましたが、今改めて「FinGATE」が唯一無二の金融系スタートアップの集積地となったことを感じています。「FinGATE」には、現在資産運用やフィンテック系のスタートアップのみならず、金融庁、東京都、金融系の業界団体、投資家など80社以上ご入居いただいていて、スタートアップが大きく育っていくためのエコシステムに必要なプレイヤーが集ってきました。
元来、日本橋兜町・茅場町は「コト始めの街」「証券・金融の街」としての地歴を持っています。それらの歴史を承継していきながら、このコミュニティをパワーの塊として、これから新しく何かをはじめたいという人へ還元するような、場づくりを目指したいと思っています。
今後は、コミュニティーを重視したコミュニケーションをとるためのラウンジをつくり、既に拠点を構えていただいているテナントの皆様や、培ってきたネットワークの方々が集い混ざり合う仕組みをつくっていきたいです。」と、荒さんは話します。

そんな構想の足がかりになる新しいスペースが、2023年10月にオープンしました。

「2023年10月に新規開設した「FinGATE CLUB」では、VCによるアクセラレータープログラムの開催や専門家によるメンタリング支援の相談窓口の整備、会員制度の設立により、チャレンジャーをより厚くサポートしていける体制を整備します。また、本コミュニティをビジネスの側面だけでなく街の店舗で働く人々など、ライフスタイルという側面からも繋がるように、その輪を拡げていきたいと考えております。「FinGATE CLUB」ではコミュニティーマネージャーという形で私たちも常駐しますが、来た人を物理的につなげていくような橋渡し的な人間がいることで、より強いつながりができると考えます。ポップアップやビアナイト等も企画し、場を起点に、働く人と街をしっかりと繋げていきたいです。」(中島(優)さん)

2023.10.16オープン「FinGATE CLUB」は新しい交流の場へ
壁には兜町を拠点に活動する企業のロゴがずらり

兜町NO.1!「起業家が集う街」から「起業家が生まれ育つ街」へ

6年の軌跡を経て、ますます可能性を広げつつある「FinGATE」プロジェクトですが、最後にメンバーひとりひとり、これから実現していきたいことを伺いました。

「様々な取り組みを通じて、この兜町という街をNO.1にしていきたいです。国内でもトップクラスの金融スタートアップが集積する街として、この街を目指して人が集まってくるような街にしていきたい。常にここから新しい何かが生まれ、育ち、巣立っていく。そのようなチャレンジャーたちを街が支える。そんな街がうまれたら本当に面白いな、と思います。」(荒さん)

「テナント企業様と地域の交流に力を入れ、人と人の交流を大事にした街づくりをしていきたいですし、今まで“スタートアップを呼び込む街“でしたが、これからは”起業家が生まれる街“にしてきたいです!」(中島(優)さん)

「復職後は、もっと女性や育児視点のアイデアも生かせると思いますし、国内企業のみならず海外企業に対しても、兜町や「FinGATE」を知っていただく取り組みや、参入に関するサポート等、幅広い支援を積極的にしていきたいです。」(中嶋(萌)さん)

「兜町のファンを増やし、世界に誇るオンリーワンの街“KABUTO-CHO”ブランドを育んでいけたら。“新しいことにチャレンジするなら兜町”という評判を拡げていけるよう、奔走して参ります。」(村井さん)

FinGATEは現在5施設。2025年度末までに100社の入居を目指している

起業家や投資家など社会変革を目指す様々なプレイヤーと平和不動産のチームメンバーとの、顔の見える交流で進化していく日本橋兜町・茅場町再活性化「FinGATE」プロジェクト。ともに成長し合うことで「コト始めの街」の新たな景色を実現し、新たな歴史を紡いでいく取り組みは、これからも続きます。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!