【FinGATE Interview】justInCase Technologies/共同利用型ITシステム提供と販売促進で保険料のコストに切り込む
金融系スタートアップの起業から成長までを支援するオフィスシリーズ「FinGATE(フィンゲート)」。”コト始めの街”としての歴史を持つ日本橋兜町・茅場町エリアに5施設を整備し、国際金融都市東京構想に向けた再開発の一翼を担うインキュベーション事業です。入居するのは金融系スタートアップのほか、行政機関や大手企業等、国内外で90社以上。セミナーやイベント等も企画し、企業間のマッチング機会も提供しています。「FinGATE Interview」では、FinGATEに入居するみなさまに、会社の現在と未来、兜町・茅場町に寄せる想いなどについてお話を伺っていきます。
今回は「FinGATE KAYABA」のあるビルの7階にオフィスを構える株式会社justInCaseTechnologies(以下、justInCaseTech)代表取締役の畑 加寿也さん。justInCaseTechは、「助け合い」のビジョンの元にSaaS型保険システム「joinsure(ジョインシュア)」の提供を通じて保険DXを推進するInsurtech企業です。製販分離の流れのなかで変革期を迎えつつある保険業界で、独自のポジションを築く同社に、お話を伺いました。
保険料のコストに着目し、ITシステム提供と販売支援の二軸でアプローチする
非保険事業者であるBtoCプラットフォーマーの顧客に保険を販売するために、保険会社と連携して保険商材を提供できるサービスを展開するjustInCaseTech。国内の保険料が他国に比べて高額になっている現状を踏まえ、特にコストの割合が大きい「IT費用」と「販売手数料」、「リスクバッファ」の3つにフォーカスし、効率性や収益力を上げるサービスを提供しています。
畑:保険会社さんのITシステムがレガシー化していることもあり、IT費用が嵩んでいる。そこで保険会社向けに、SaaS利用による共同利用型の保険契約管理システムをご提供して、IT費用の効率化を計っています。「販売手数料」に関しては、プラットフォーマー向けに保険販売のコンバージョンレートを向上させるためのサービス(システム・ID連携など)を提供しています。そこにはコンサルティング料が含まれることもありますが、基本的には保険の販売をご支援する形で、販売手数料の課題を解決しています。「リスクバッファ」に関してはlow-hanging fruitではないため、現在は「IT費用」と「販売手数料」の削減に注力しています。
この「保険会社に向けたITシステム提供」と「プラットフォーマーに向けた販売支援」の二軸の事業の両立が、justInCaseTechならではの強みです。
畑:それぞれに近しい領域の他社はいますが、コンペになったことは一回もないです。販売支援とITシステムの両面での提供価値を行っているという点でも、ユニークなポジショニングを目指しています。
従来システムに感じていた課題が原動力に
前職では保険の仕組みを考える役職に従事していた畑さん。金融業界の基幹システムとして主流になっているCOBOLでは、プロフィールの選択項目に回答を一つ追加するだけの改修でも半年かかるなど、膨大なコストを払わなければいけないことに課題を感じていました。
畑:保険をつくるプロセスにおいて、金融庁の認可が必要だったり、何社にも渡って外注をしたり、膨大な時間と費用がかかるんですね。でも海外を見るとDX化は進んでいるし、システムで解決できないか、と。
そういった「ITコストが高すぎる」というところが一番の動機で、2021年からjustInCaseTechとしての事業を開始したという経緯です。
「ロイヤリティ指標」に重点を置き、汎用化したサービス展開を目指す
二軸の事業展開を進めるなかで、今後はプラットフォーマーへ汎用化してサービスを展開していきたい、と畑さん。そんななか、直近で利用を開始したのが北海道電力です。
畑:これまでは一定規模の会社様にしか展開してこなかったんですが、直近までに効率化してきたので、これまで取り組めなかった規模の会社様にもサービスを提供できるようになりました。規模が巨大でなくとも、独自の立ち位置でユーザーにサービス展開をされていらっしゃる会社様はたくさんいらっしゃるので。当社では「ロイヤリティ指標」と言っておりますが、これが重要です。例えば北海道電力様なら、地元で知らない人はいない超優良企業ですよね。そこのロイヤリティってものすごく高い。彼らの「ワンストップショッピングを狙いたい」というニーズに対して、弊社はサポートを提供しています。
justInCaseTechが事業開始から4年目を迎えようとしている今、保険業界を取り巻く環境は大きく変わり始めています。「プラットフォーマーが保険会社をつくる流れも、今後さらに加速するだろう」と畑さん。国内でも大きな変革期となりそうなタイミングに、期待は高まります。
畑:先週行政方針も発表されましたが、保険業界にとって10年ぶりの大きな変化が来るタイミングにたまたま居合わせることができていると感じています。もしかしたら安定的な方々にとってはリスクかもしれませんが、僕らにとってはチャンスでしかない。もしくはチャンスに変える事業展開をするしかないと思っています。
拠点・茅場町でよく行くお店は?
2020年12月から茅場町にあるFinGATE施設に入居しているjustInCaseTech。
畑さんが茅場町でよく行くのは、「四川菜館 茅場町店」と「刀削麵酒家 茅場町店」です。
畑:「四川菜館」は料理が出るのが早く美味しいのでよく行きます!
もうひとつは 証券会館裏手にある「刀削麵酒家」。ここがなかなかフレキシブルで面白いんです。時間がない時は電話で「いつも頼んでる刀削麵お願いします」って伝えておくと、お店に到着するタイミングに合わせてつくってくれるんです。
すごくフレキシブルなんですけど、おそらく電話に出る人がオーナーではないと思っていて。これ、リッツ・カールトンと一緒なんですよ。リッツ・カールトンって、2000ドルぐらいまで各人員に任された予算があるんです。
例えば、お客様の子どものおもちゃが壊れたら、従業員がその予算で買って渡す。そうすることで顧客満足度が上がるわけです。これって、最強の権限委譲じゃないですか。日本でバイトにそんな権限を与えているチェーン店はないですが、「刀削麵酒家」はそれをやってるんです。柔軟性でいったら、その2社が突出してトップティアです。
ありがとうございました!
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