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【FinGATE Interview】GOファンド株式会社「個人投資家だったから分かる、 絶対リターンの実現にこだわった運用を目指す」

新しい情報・文化の発信基地として再開発が進み、ますます賑わいが増す日本橋・兜町エリア。資産運用・Fintech等の金融系スタートアップの起業・成長を支援するサービスオフィス「FinGATE」は、FinGATE BASE、FinGATE KABUTO、FinGATE KAYABA、FinGATE TERRACE、FinGATE BLOOMの5つの施設があります。これらの施設には、現在90社以上のスタートアップ、行政機関、団体等が入居しています。

それぞれの会社の今と未来、そしてFinGATEや日本橋兜町・茅場町に寄せる想いと期待について、話を伺ってまいります。

今回は、学生の頃から投資を始め、新卒でベイビュー・アセット・マネジメントに就職、社内史上最年少ファンドマネジャーとして1,000億円以上の資産運用を任されてきた田沼豪(たぬま ごう)さん。個人の資産形成に寄与するため、独立してGOファンドを立ち上げた背景や、兜町・茅場町に期待するところなどを伺いました。

大学1年生から投資を始めたと聞いています。具体的にどのような投資をしていたのですか。

田沼 私が大学に入学したのは2010年でした。当時の日本は株価が低迷していて、ロングオンリーでは何をやっても勝てないという状況でしたから、株式に関してはロングとショートを組み合わせたロング・ショート戦略で投資をしていました。あとはFX(外国為替証拠金取引)ですね。大学生の時はかなり真剣に、投資に取り組んだこともあり、運用資産は2,000万円くらいに増えました。

当時は決して、株式投資をするには良い環境ではなかったのですが、勉強になったのは事実です。もし2013年以降に株式投資を始めていたら、アベノミクスで株価がどんどん値上がりしていたので、あまり苦労せずに利益を積み上げられた可能性もありますが、それでは株価が大きく調整する状況に直面した時、どう対応したらよいのか分からず、判断を誤って失敗していたかも知れません。ですから、悪い相場環境の下で投資家人生をスタートできたのは、幸運だったと考えています。良い経験をさせてもらえました。

大学を卒業してからベイビュー・アセット・マネジメントに入社されています。そこではどのような運用を行っていたのですか。

田沼 運用スタイルは今、私がGOファンドで行っているのと同じで、クオンツを用いたヘッジファンド運用です。クオンツとはさまざまなデータを分析して投資判断を下すというもので、投資対象は日本、米国、欧州の株価指数先物、債券先物です。当時、任されていた運用資産は1,000億円でした。

ベイビュー・アセット・マネジメントを辞めて、GOファンドを立ち上げたきっかけは何だったのですか。

田沼 ベイビュー・アセット・マネジメントは、日本でもトップクラスの運用会社ですし、そこでファンドマネジャーとして働き、スキルを積み上げて来られたことに対する満足感はありましたが、ある時、知り合いから「豪くんにお金を運用してもらいたいんだけど」と言われた時、起業することを決断しました。

というのも、ベイビュー・アセット・マネジメントは、日本の投資信託会社のように小口の個人資金の運用をメインとしておらず、もっぱら年金基金や地方銀行などの機関投資家資金や、個人でも富裕層のファミリーオフィスといった大口資金の運用を行っていたためです。1口100万円、1,000万円の資金では運用してもらえないのです。

でも、私の周りにいる人たちからすれば100万円、1,000万円のお金を着実に増やしたいというのが本音です。いくら自分の運用スキルが高まったとしても、自分の身近な人たちの幸せに貢献できないことに対する不満が、徐々に蓄積していきました。自分が持っているスキルを小口化して販売できれば、世の中のためになるかも知れないと思い、GOファンドを立ち上げたのです。

GOファンドの商品特性について教えて下さい。

田沼 2020年6月から私募のファンドを設定して、機関投資家の資金を運用してきましたが、この度、投資運用業、第二種金融商品取引業のライセンスを取得したことによって、不特定多数の方を対象に、小口で販売できるようになりました。

最低投資金額は初回入金が10万円以上1万円単位で、追加投資は1万円以上1万円単位になります。比較的どなたでもご利用いただける金額設定にしてあります。運用スタイルは、前職で私が行っていたのと同様、日本、米国、欧州の株価指数先物、債券先物への分散投資を行い、絶対リターンで年15%以上を目指します。これら先物の買いだけでなく、売りも組み合わせたロング・ショート戦略です。

購入は今のところ、GOファンド株式会社のホームページから直接申し込んでいただく形ですが、これからは販売金融機関経由での購入も可能にしたいと考えています。これについてはすでに複数の金融機関と話を進めている最中です。

GOファンド 代表取締役 兼 ファンドマネージャー田沼 豪氏

商品の枠組みとしては、「投資信託」ではないのですか。

田沼 「ファンド」というと投資信託を真っ先にイメージされる方も多いと思うのですが、GOファンドは現状、投資信託ではなく「匿名組合」というスキームを用いて設立されています。個人向けの投資信託を設定するには、恐らく年間で数千万円程度のコストが必要です。

弊社の場合、親会社を持たない完全独立系の会社です。ベンチャーキャピタルからの出資も受けていません。だからこそ自分たち自身が本当にやりたいビジネスを追求できるという魅力はあるのですが、一方で資金力がやや弱いという課題があります。

資産運用はストック型のビジネスですから、これからファンドの販売が伸びてくればコストも吸収できますが、そうなるまでには若干の時間を必要とするので、ある程度の余裕が生まれてくるまでは、匿名組合方式で進めていこうと考えています。ただ、いずれは投資信託ビジネスに乗り出すことも視野に入れています。


個別銘柄には投資しないのですか。

田沼 はい。すべて先物取引を用いて運用します。株式であれば日経平均株価やS&P500などの株価指数に関連した先物取引ですね。

この手の先物取引を用いて運用するメリットは、流動性を気にしなくても済むことです。それこそ10万円単位の小さな資金の出入りにも対応できますし、ファンドの規模が1,000億円、5,000億円になったとしても、滞りなく売買注文を執行できます。将来的には1兆円規模のファンドを目指したいと思います。

今はまだ10億円程度の規模しかありませんが、皆、資産運用ビジネスを始めた頃はそんなものだと思うのです。今では1兆円を超えた運用規模を持っている投資信託会社でも、創業当時は本当に小さい規模からスタートしています。今の規模で「目指せ1兆円」などと言っても笑われるだけかも知れませんが、決して実現不可能な数字だとは思っていません。

KABUTO ONE にて

絶対リターン追求型を特徴のひとつに打ち出した理由は何ですか。

田沼 正直、クオンツを用いてなぜリターンが得られるのか、私の運用スタイルのどこにどういう強みがあるのかは、それこそが競争優位の部分であり、本当のところは絶対に種明かしできません。

ただ、先ほども申し上げたように、私はプロの運用者になる前、かなり厳しい投資環境の中で自分のお金を運用し、ある程度のリターンを実現してきました。そこでは、ロングだけだと勝てないので、ショートも組み合わせた戦略を用いてきたのですが、最終的に目指したのは、マーケット環境の良し悪しに関係なく、ある程度のリターンを確保していく絶対リターンの考え方です。

ロングオンリーのファンドなら、マーケットが30%下がった時、運用成績が10%のマイナスで済めば「頑張ったね」と評価されますが、投資を専業にしている個人投資家の場合、どれだけマーケットよりも値下がり率を小さく抑えられたとしても、マイナスはマイナスです。専業投資家はマーケットが下げたとしてもプラスのリターンを目指さなければならない。その点は非常にシビアですし、そういう個人の側に立った運用者になるのであれば、やはり絶対リターンの実現を目指すべきだろうと考えたのです。

田沼さんの将来の夢は何ですか。

田沼 「生涯投資家」でありたいと思います。ずっとマーケットの世界で生きていきたいですね。

そこまでマーケットに惹かれている理由は、あくまでも例え話ですが、マーケットとは世界最大のオンラインゲームだと思っているからです。人種、年齢、経験に関係なく、きちっと決められたルールがあって、パソコンを通じて世界中の人たちと駆け引きができる。

そのうえ、普通のオンラインゲームは、そうは言ってもゲームなので、負けても言い訳できますが、投資の世界は実際にお金がかかってきますから、言い訳が一切できません。そういうシビアな世界で、世界中の天才たちと知力を振り絞ったゲームができる。そこに魅力を感じます。

兜町、あるいはFinGATEに対する期待があれば教えて下さい。

田沼 兜町はかつて株式の街として栄えましたが、私は1990年生まれなので、正直、兜町が栄えた時期をリアルタイムでは知りません。

ただ、逆にその当時を知らないからこそ、変な固定観念なくこの街の現状を評価できるのも事実です。

私にとって兜町は、かつての株式の街ではなく、金融系スタートアップの地です。私がこの街に来てから、FinGATEにさまざまな金融系スタートアップが入居するようになり、KABUTO ONEが完成し、むしろこれからどんどん栄えていく街というイメージを日に日に強くしています。

いずれはFinGATEに入っているさまざまな金融系スタートアップと交流しながら、ビジネスマッチングのようなこともできれば楽しいですね。

ありがとうございました!最後に田沼代表の著書「ファンドマネージャーGO」をご紹介します。

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